魔女の宗教と布教について

魔女よもやま

昨日「鐘のようであれ」という記事を書きました。詳しくは読んでいただきたいのですが、ようするに人に何か応えるときは聞かれ方にあった応え方が大切だという話でした。(うーん、我ながらなんと乱暴なまとめ方だろう……)

さて、この「相手のこちらへのアクセスの強さに応じて」というのは単なる質問の場合は結構シンプルに線引きが自分の中でできるものです。また、その線引きに従うことに納得もできるし、それが相手の為になるということも信じられるので、これは「鐘のようであれ」のところでお話ししたようにさして問題があるものではありません。

ところが、宗教というものはそうシンプルでもありません。そもそも「宗教の目的というものが何か?」という問題があります。世界中に色々な宗教があり、それこそ崇敬されている神々も教えもバラバラです。でも、一つだけ共通する目的をあげるとすれば「その宗教を信じる人を幸せにすること」です。きちんとできているかどうかは別としてこの目的を持っていないという宗教はないでしょう。この「幸せ」という言葉には色々と難しい要素があるのですがそれは今回は深入りしないことにします。

さて、少し話がずれますが、おいしいお店を見つけたら親しい人に勧めたくなることはたいていの人が経験していると思います。また面白い映画やドラマをみたらそれを周りの人に勧めることもよくある話です。このように人間は自分が好きだったり、気に入ったりしたものは人にも勧めたくなる習性を持っているのです。宗教もこれと同じで自分が信仰している、つまり自分が大好きな宗教だからこそ人に勧めたくなるのです。これが本来の布教活動なのです。だから布教というものは純粋な善意の固まりであり、相手の幸せを願う行為にほかならないのです。ところが人間どうしても好きなものを人に勧めるときには強引になりがちです。それで本来の布教が「勧誘」に変わってしまいます。これはいけません。どんなに自分が素晴らしいと思っていたとしてもそれが勧誘になってしまうとそれはすでに相手の為ではなく達成感、満足感など、自分の為になってしまうからです。よく「信仰の自由」という言葉を振り回して勧誘活動をする人が世の中にはいますが、あのようなものは信仰の自由でも何でもありません。一番大事な信仰の自由とは「信じない自由」なのです。そうでなければ強引な改宗を強いることすら正しいことになってしまいます。もちろんどんな宗教であっても強引な改宗を迫るということは絶対にしてはいけない犯罪的行為です。ですからその自由が完全に保証されている中で本人が宗教を選ぶ、ということが本当の意味での信仰の自由なのです。

さて、話を元に戻しますが、私なども人と話をしていたり、あるいはネット上でやりとりをしていたりすると「ああ、この人が求めているのは魔女の宗教なんだろうな」と確信することがよくあります。そういう時に私が魔女の宗教に案内してあげれば喜ばれるのだろうな、とも思います。しかし、これは絶対にやってはいけないことだと思っています。それにはいくつかの理由がありますが、大きくは2つあります。

まづに本人から直接求められていないのにこちらから勧めるということは、場合によっては相手の足元を見て勧誘することになってしまいます。これは魔女の宗教に限らず許されることではありません。もちろん、熱心な質問やそこから派生するお話を色々とすることは別問題ですが。

もう一つは魔女の宗教はどうしても自発性が強く求められます。と、言っても本当は大したことではないのですが、少なくても自分が求めるものを自分から求める、というくらいはできないと実践が難しくなってしまうからです。語弊を恐れずに言えばある意味「正しいわがままをはっきり言える」ことが結構大切なのです。

特に魔女の宗教の場合、自分が参入させた人は大抵自分が所属するカヴン(魔女団、魔女のグループのこと)に入る可能性が高くなります。そしてカヴンメンバー同士にはかなり密接な関係が場合によっては一生続きます。ですから新興宗教などがよくやるような勧誘で数を集める、というのはどう考えてもそぐわないのです。少し考えていただきたいのですが、道端などで手当たり次第声をかけて「私の家族になりませんか?」という人を想像できますか?いたとして、そういう人を信用できますか?布教する側もされる側もそのくらいの想像はすべきなのです。なぜなら、本当は宗教を布教するということはその人の人生に多少なりとも責任を持つということでもあるのですから。

他の宗教には各々の考え方(それが正しいか否かは全く別問題として)があるので、今そこまで言及する気はさらさらありませんが、魔女の宗教の場合はせめて自分から希望してくれるくらいはしてもらわないと受けいれる側もどうにもしようがないと思います。宗教を信仰している人に自分がその宗教に興味を持っていることを匂わせるとすぐに飛びついて勧誘してくる宗教が多いせいかあまり自分から宗教の門を叩こうとする人はいません。実際、以前いくつかの宗教団体のメンバーにランダムにアンケートをとったことがありますが、9割方が「人に勧められて」というのが最初のきっかけでした。これは今もあまり変わらないでしょう。しかし、魔女の宗教ではそれは成り立ちません。少なくても「まともな魔女の宗教」ならば魔女の方から勧めたり、誘ったりということはありえません。Oriental Wiccaでも希望者に門戸を開くという意味でこの通信講座を開講していますが、間違ってもこちらから誰かに勧めるということはしません。

ここからは私のある意味個人的な持論になってしまいますが魔女の宗教の場合、今は魔女狩りなどの危険はないのですから、

1° まづ魔女や魔女の宗教についての正しい知識などを得る
2° その上で改めて自分が魔女の宗教を今後も実践していきたいかを考える
3° 自分がこの道に進もうと決めたらイニシエイションを受ける

というステップを踏むのが健全だと思っています。そして同時にこの手順を踏めば途中で挫折することもなく「魔女という生き方」を自分の本当の生き方として一生豊かに実践していくことができると思っています。

ネットなどでこうして色々な情報を出しつつも、私が鐘のようにある為には「ただ両手を広げて待っている」ことしかできないのです。

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